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農地の納税猶予には何が必要?概要や要件を解説

(写真=PIXTA)

相続した農地で今後も農業を続けたいと考えている人に対して高額な相続税や贈与税が課されてしまうと、農地そのものを手放さなければならないという事態にもなりかねません。このような弊害を避けるため、農地にかかる相続税や贈与税には納税猶予の制度が認められています。以下では、納税猶予制度の概要や適用を受けるための要件について解説したいと思います。

農地の納税猶予特例の概要

相続税についての納税猶予制度は、農業経営を継続する相続人を税制面で支援するために設けられている制度です。

従来は、相続人自身が農業の用に供する場合のみを対象としていましたが、2009年度(平成21年度)改正により市街化区域外の農地で「特定貸付け」を行った場合、また、2018年(平成30年)9月1日からは生産緑地地区内の農地で「認定都市農地貸付け等」を行った場合についても適用されるようになっています。

なお、「特定貸付け」というのは農地中間管理事業など所定の事業に対する貸付け、また、「認定都市農地貸付け等」というのは特別法により認定を受けた事業計画にもとづく貸付けなどを指します。

相続税の納税猶予制度では、本来の相続税額のうち「農業投資価格」を超える部分が一定の要件のもと納税猶予され、相続人が死亡した場合などには税額が免除されます。農業投資価格というのは、恒久的な農地として自由に取引された場合の価格を指し、10aあたり20万円から90万円程度と一般の土地より低い評価額となります。

また、贈与税の納税猶予制度も、農業後継者の育成などを税制面から支援するために設けられている制度です。

通常、土地などの資産を贈与した場合、暦年で110万円の基礎控除を超える部分に贈与税が課されます。しかし、これでは後継者に農地をまとめて贈与したい場合、贈与税が足かせとなって後継者育成が進まなかったり、農地を細分化せざるを得ないといった事態が考えられます。

そこで、一定の要件のもと農地を後継者に贈与した場合には、贈与税の納税が猶予されるとともに、贈与者または受贈者が死亡したときには猶予された贈与税が免除されるようになっています。ただし、贈与者の死亡により農地等納税猶予額の納税が免除された場合には、特例の適用を受けて納税猶予の対象になっていた農地等(特例農地等といいます。)は、贈与者から相続したものとみなされて相続税の課税対象となります。

「相続税」の納税猶予特例を適用するための要件

被相続人の要件としては、死亡の日まで農業を営んでいた者、「特定貸付け」や「認定都市農地貸付け等」を行っていた者、あるいは、贈与税納税猶予の対象となる生前一括贈与をした者であることが必要です。

また、相続人の要件としては、相続税の申告期限までに農業経営を開始して、引き続き農業経営を行う者、相続税の申告期限までに「特定貸付け」や「認定都市農地貸付け等」を行った者、生前一括贈与を受けた者であることが必要です。

納税猶予を受けるための具体的な手続としては、被相続人の死亡から10か月以内に所轄の税務署長に相続税申告書と所定の添付書類を提出するとともに、担保を提供することになります。

「贈与税」の納税猶予特例を適用するための要件

贈与者の要件としては、農地などを贈与する日までに引き続き3年以上農業を営んでいる個人であることが必要です。

また、受贈者の要件としては、贈与者の推定相続人であり、後継者としての資格を満たしていることについて農業委員会が証明した個人であることが必要となります。後継者としての資格というのは、年齢や農業従事年数などの資格を指し、農業委員会を置かない市町村では市町村長が証明を行うことになっています。

納税猶予を受けるための具体的な手続としては、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、所轄の税務署長に贈与税申告書と所定の添付書類を提出するとともに、担保を提供することになります。

納税猶予を受ける際に注意することは?

以上のような要件や手続のほか、納税猶予の期間中は3年ごとに「継続届出書」を提出する必要があります。継続届出書には、特例の適用を引き続き受ける旨や特例農地等にかかる農業経営に関する事項などを記載します。

また、免除要件を満たす前に相続人や受贈者が農業経営を廃止したり、農地等を譲渡した場合などには、納税猶予が打ち切りとなります。この場合、猶予税額の全部または一部と申告期限からの利子税を支払うことになるので注意を要します。

各種の要件には例外があるほか、2018年度(平成30年度)改正では対象となる農地などについての見直しもなされています。特例を受けるにあたっては、こうした動向にも留意しましょう。

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