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法人だけじゃない!?個人事業主の事業承継にはどんな方法がある?手続きは?

(写真=PIXTA)

中小企業経営者が後継者選びなど事業承継に悩むのと同様に、個人事業主も「子どもに引き継ぐか」「自分の代でたたむか」など、代替わりへの悩みを抱えています。政府や与党は個人事業主の事業承継を優遇する目的で「個人版事業承継税制」の創設に向けて動いているため、個人事業主の承継は今後加速すると考えられますが、そもそも個人事業主の事業承継とはどのようなものでしょうか。

個人事業主の3つの事業承継方法

個人事業主は旅館や美容院、農業、工場、個人店、個人塾、ECサイト運営、プログラマーなど多岐にわたります。個人事業主の事業承継でも法人と同様に後継者選びを最初に考えます。後継者に選ばれるのは配偶者や子どもが多いようですが、親族、もしくは第三者に引き継ぐ人もいます。

通常、個人事業主は相続承継、生前贈与、買い取りのいずれかの方法で事業承継を進めます。相続の場合、相続人が複数いれば財産分与の関係で後継者以外の相続人に事業資産が移転することもあります。また、相続による資産移転は相続税が発生する場合もあり、逝去してから4ヵ月以内に非相続人である経営者の所得税の準確定申告が必要です。

その点、生前贈与なら後継者に資産を確実に移せます。後継者が事業を続けるにあたり、資産が別の相続人に移って事業がしづらくなる懸念を払拭できます。資産評価額によって贈与税はかかるものの、暦年贈与を選択すれば毎年110万円までは贈与税がかかりません。

後継者が事業資産を買い取る方法もありますが、後継者が資金不足ならば買い取りができず、事業がストップするおそれもあります。なお、買い取りによる承継では、現経営者に所得税かかります。

どの方法で事業承継するにしても、借入金や純損失の繰越しを後継者に移すことは出来ません。借入金などは廃業前に整理することが大切です。

個人事業主は何を後継者に引き継ぐのか

個人事業主の事業承継でも法人の事業承継と引き継ぎ内容は大きく変わりません。経営やビジネスの進め方、サービスやノウハウの伝承は丁寧に行います。

加えて、取引先や協力先について、過去からの関係・状況について説明するのを忘れないようにしてください。これまで経営者しか知り得なかった情報や戦略、過去からの経緯など、後継者が知っておくべき情報は多数あります。早めに取引先や関係先に後継者と挨拶にうかがい、後継者だと説明し、スムーズな取引が継続できるよう関係構築を行います。後継者と業務委託契約や秘密保持契約など、各種契約が必要な場合もありますから早めに引き合わせをしましょう。

また、従業員の雇用関係も重要な事項です。企業と従業員の雇用契約とは異なり、個人事業主の場合は人と人の雇用契約になりますから、現経営者の廃業に伴って従業員たちは一旦退職扱いになります。そのうえで、後継者と新たに雇用契約を結ばなければなりません。従業員が不安に思わないように早めの対応が必要です。

個人事業主の事業承継は「経営者」の廃業手続きが必要

個人事業主の場合は法人とは異なる手続きを行い、事業承継を進めることになります。現経営者側の主な手続きは下記のとおりです。

●個人事業の開業・廃業届出書
所轄の税務署に対して廃業後1ヵ月以内に提出が必要。事業所得、不動産所得、山林所得によって事業を営む場合は提出漏れがないよう注意すること。消費税の課税事業者である場合は、「事業廃止届出書」の提出も忘れないように。

●(都道府県税事務所へ)事業開始(廃止)等申告書
開業届を提出して個人事業税の支払いをしている場合は、都道府県税事務所にも廃業届を提出。都道府県によって締切が違うので注意すること。

●所得税の青色申告とりやめ届出書
青色申告の個人事業主は青色申告をやめる翌年の3月15日までに提出が必要。

●平成●●年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書
廃業時に予定納税額が一定基準額に満たないと見込まれる場合、予定納税額の減額申請手続きを忘れずに。

●給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
個人事業主でも従業員や専業専従者に給与を支払っている場合は、廃業してから1ヵ月以内に所轄の税務署に提出。従業員は退職扱いになり、後継者と改めて雇用契約を結ぶことになる。

個人事業主は税金計算基準が12月末日ですから、年末に向けて廃業する経営者が多くいます。これは、経費などの会計処理、煩雑な手続きをある程度まとめて整理する目的があります。

個人事業主の事業承継は「後継者」も手続きが必要

個人事業主の事業承継では、後継者側でも開業の手続きが必要です。法人ではないので、あくまでも責任が個人に帰属するという考え方のため、後継者が「新たに仕事を始める」という確認で申請を行います。主な手続きは下記のとおりです。

●個人事業の開業・廃業届出書
所轄の税務署に対して開業1ヵ月以内に届出が必要。

●給与支払事務所等の開設届出書
給与支払いを行う事業所を届出する必要があるが、新たに個人事業主として開業届を税務署に提出していれば提出義務はない。

●(都道府県税事務所へ)事業開始(廃止)等申告書
開業届を提出して個人事業税の支払いをする場合には都道府県税事務所にも開業届を提出。都道府県によって締切が違うので注意すること。

●所得税の青色申告承認申請書
青色申告の個人事業主は青色申告を始める翌年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合には、開業の日から2ヶ月以内)に提出が必要。

●源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書
従業員の雇用人数が常時10人未満の場合、半年ごとに給料から源泉徴収した所得税(復興特別所得税含む)の納期を変更できる。提出時期の定めなし。

●消費税課税事業者選択届出書
※これまで消費税の納税義務が免除されていたが売上にかかる消費税額より仕入れにかかる消費税額が多く、還付請求を受け取りたい場合に提出。適用を受けたいと思う課税期間が始まる前日(選択しようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間等である場合には、その適用を受けようとする課税期間中)までに提出が必要。

●銀行口座の開設
個人事業主として生計を立てるには、入出金の流れが分かる銀行口座の開設が必須。手続きに時間がかかる場合もあるため、口座開設予定の銀行に前もって、いつ、どのタイミングで口座開設ができるのか問い合わせを。

個人事業主の事業承継、余裕を持って代替わりを

法人の事業承継同様に、個人事業主の事業承継にもさまざまなステップや手続きがあることが分かりました。ある程度時間をかけて後継者にスキルやノウハウ、経営術を伝承するのはもちろんのこと、税金まわりや手続きについては1人で抱え込まずに、専門家のアドバイスを請うようにしましょう。特に納税資金の資金繰りについては、事業承継方法によって納税額が変わるので、計画的に事業承継を進めることが肝要だと言えます。

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