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IPOは事業承継の出口戦略のひとつになりえるか

IPO
(写真=moomsabuy/Shutterstock.com)

企業オーナーが会社の永続的な経営を考えるとき、事業承継では誰を後継者にするのか悩むものです。そのうえ、自社株を誰にどのような手段で承継させるかという対策も必要です。業績がよい企業の場合、自社株評価を圧縮しようとしても圧縮しづらいことに加えて、納税資金の準備にも影響があります。そのため、自社が安定性と成長性を備えていると判断したうえで、適切な資本政策と長期的な計画を検討し、IPO(株式公開)を事業承継の出口戦略と考える企業オーナーもいます。

IPO(株式公開)が事業承継の手段になる理由

事業承継を考えるとき、後継者選定(経営承継)と自社株承継(株式承継)の2点が課題にあがります。一般的に会社の業績が好調であるほど自社株評価額が高くなる傾向です。事業承継を行うときにはオペレーティング・リース、法人保険、収益不動産などを活用して自社株評価の圧縮といった対策をしています。

会社の事業が順調であれば自社株評価を圧縮しきれず、後継者は多額の納税資金の準備が必要となり、結果として負担が増えるのです。そこで、IPOが選択肢のひとつとなるのです。IPOによって株式に流動性が生まれます。そのため、後継者が相続人であれば相続した自社株を市場で売却して相続税の納税資金に充当することも可能です。

一般的に未上場株式の評価額(類似業種比準価額の場合)は純資産額より低くなりますが、将来ののれん代が反映されるIPO時の株価が純資産額を大きく上回ることは珍しいことではありません。そのため、保有株数が多ければ多いほど企業オーナーはキャピタルゲインを獲得できます。また、IPOによって会社の信用力が増すことで、人材獲得や業務提携、新規事業拡大などのさまざまな恩恵を受けることも可能です。

IPOを事業承継の手段とするための前提

ただし、IPOを行うためには上場基準を満たしている必要があります。上場基準は上場する市場によって異なります。

東証1部 東証2部 東証マザーズ
株主数 2,200人以上 800人以上 200人以上
※上場時までに500単位の公募を行うこと
流通株式 2万単位以上 4,000単位以上 2,000単位以上
流通株式比率 35%以上 30%以上 25%以上
(企業)時価総額 250億円以上 20億円以上 10億円以上
純資産額 10億円以上 10億円以上
過去2年間の利益の額又は時価総額 総額5億円以上、または時価総額が500億円以上(※) 総額5億円以上、または時価総額が500億円以上(※)

※最近1年間における売上高が100億円未満である場合を除く

そのうえで安定した経営と好業績、今後の成長・発展の見込みがあるだけではなく、経営管理組織、利益管理制度、内部統制・監査制度など社内組織体制の整備も必要です。また、上場審査にあたり関係会社については粉飾決算や役員への不当な利益供与のなどの可能性、親族の役員や大株主、取引先など特別利害関係者との取引関係もモニタリングされます。

そのため、関係当事者の整理を行うことも重要です。加えて、IPOは準備期間を含め2~3年かかる他、監査報酬や証券会社の引受手数料などをあわせると数億円かかる場合があります。事業承継を検討してから後継者に承継するまでは多くの時間がかかりますが、IPOを視野にいれる場合は上記の内容を網羅しておく必要があることを念頭においておきましょう。

また、上場すると社会的な責任も大きくなります。後継者や経営陣を含めて社会の要望に応えられる経営を求められます。後継者選びについてもより慎重な姿勢が求められますし、上場企業経営者としての立場を理解して発言し、行動できるよう育成していかなければならないことも忘れないでください。

悩む場合は金融機関をはじめとした専門家に相談を

このように、IPOによって事業承継を行うには検討すべき内容が多々あることが分かりました。すべての企業が上場できるわけではありませんし、上場しても経営手腕いかんで経営が傾く場合もあります。しかし、オーナー経営者が心血を注いで築き上げた会社だからこそパブリックカンパニーとして磨き上げ、次の世代に託す意味ではひとつの事業承継の形であるともいえます。

特に事業承継に関わるIPOでは資本政策の部分が重要です。資産管理会社の活用方法や安定株主対策などの専門知識やそれぞれに事情が異なる親族の問題など、一人ではクリアできないことも多々あります。そのため、金融機関をはじめとした専門家にアドバイスを求めてはいかがでしょうか。

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