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事業承継で知っておきたいスクイーズアウトとは

(画像=Sisacorn/Shutterstock.com)

事業承継を控える中小企業にとって、スクイーズアウトは経営を安定させるためのキーワードといえるかもしれません。スクイーズアウトは企業の合併や買収の際に、少数株主を排除するための手法を指します。特にM&Aにおいては買い手が100%の株式取得を希望しているにもかかわらず、過去に株式が分散したことにより少数株主が存在し、それが弊害となる場合もあります。スクイーズアウトはそういった問題を解決するための手段のひとつです。今回は、スクイーズアウトについて一緒に確認しましょう

どうしてスクイーズアウトが必要なのか

株式会社は株式保有数の多い人(企業)が決定権を持つ多数決原理によって運営されています。ただし、多数派の株主が少数株主の利益を犠牲にして自身に有利な運営をしてしまわぬよう、会社法には少数株主の権利を保護するための規定が設けられています。

議決権の1%を保有する株主には株主総会で議題を提案する権利があります。また、議決権の3%を保有する株主であれば一定の要件のもと会計帳簿等を閲覧する権利が認められています。さらには、議決権の10%を保有する株主には会社解散請求権など多くの少数株主権があるのです。なお、1株でも株式を保有する株主の場合は株主総会における議案を提案する権利がありますし、株主総会にて質問することも可能です。

これらの権利は少数株主における投資家保護の観点からは好ましい制度ですが、機動的に会社運営を行いたい経営陣からすると、例えば少数株主が逐一こうした権利を行使して機密性の高い情報が含まれる会計帳簿を閲覧すれば、経営陣は会社運営をやりづらくなる場面があるなど、一種の障害だと感じるおそれもあるのです。

これらを解決できる可能性のある手法の一つがスクイーズアウトです。スクイーズアウトを活用すれば、少数株主の影響から解放され、迅速な意思決定や長期的視点に立った経営を行えるようになる可能性が高まります。

(画像=gopixa/Shutterstock.com)

スクイーズアウトの方法

実際にスクイーズアウトはどのようにしたらよいのでしょうか。スクイーズアウトには合併、株式交換、全部取得条項付種類株式の活用、株式併合、特別支配株主による株式売渡請求などの方法があります。それぞれの概要は以下のとおりです。

● 合併

合併の対価としては一般に合併法人の株式が用いられます。そこで、合併比率を調整することにより少数株主の保有する株式を1株未満にし、端数を現金精算することが可能です。また、合併の対価として現金を交付することでも少数株主を排除することができます。

● 株式交換

株式交換はもともと完全親子会社関係を作るための手法です。100%子会社となる会社の株主に親会社となる会社の株式を交付することにより、子会社から少数株主を排除するのです。株式交換の対価としては親会社の株式もしくは現金交付が認められます。そのため、少数株主に現金を渡して親会社からもスクイーズアウトすることができます。

● 全部取得条項付種類株式の活用

買収予定の企業の発行済株式(普通株式)に全部取得条項を付けることによって会社が株式をすべて取得します。多数派の株主には他の種類株式を交付し、少数株主には端数相当分の金銭を交付して精算を行う方法です。

● 株式併合

株式併合は例えば10株を1株にして複数の株式を合わせて少数の株式とする方法です。つまり、買収先の少数株主全員の株式を1株未満になるようにして、株式と引き換えに金銭を支払う方法です。1株未満の株式を保有するだけでは上述した株主権を行使できないことから、少数株主を排除します。なお、全部取得条項付種類株式や株式併合では少数株主の保護に欠けるところもありましたが、2015年5月からは情報開示の充実や差止請求などの制度が導入され、少数株主保護が強化されています。

● 特別支配株主による株式売渡請求

特別支配株主による株式売渡請求とは議決権の90%以上を保有する特別支配株主が買収する企業に対して売渡金額を通知し、取締役会等での承認手続きを経て、少数株主に対して株式の売渡を請求することができる制度です。これは全部取得条項付種類株式や株式併合では総会決議が必要となるなど機動性に欠ける面があるため、2015年5月から新設されました。

完全子会社となる法人のスクイーズアウト時の課税関係

スクイーズアウトにはさまざまな手法がありますが、完全子会社になる法人の課税関係について、よく確認しておきましょう。スクイーズアウトについては、手法によって税法上の取り扱いが異なるという問題点がありました。それが、2017年に税制改正が行われ、他の手法に関してもスクイーズアウトの課税関係が原則として統一されました。

従来は、合併や株式交換で少数株主に対して現金交付が行われると税務上の適格要件を満たさず、対象会社の資産が時価評価されていました。改正後は、2/3以上の株式を保有する会社による合併や交換の場合、少数株主に対して現金を交付しても法人税法に規定する適格合併等の要件を満たすようになりました。また、全部取得条項付種類株式、株式併合、株式等売渡請求時は組織再編税制の対象とはなっていませんでした。それが、税制改正によって、上述した3つの手法において法人税法に規定する適格合併等の要件を満たす時は、帳簿価額による取得のため、税負担は生じず、同要件を満たさない時は時価評価価額による取得のため、税負担が生じるようになりました。

スクイーズアウトでは改正の動向などにも注意

以上のように、スクイーズアウトにはいくつかの手法があるとともに、会社法改正なども行われています。こうした動向には注意する必要がありますが、これから事業承継をしたいと思う経営者はスクイーズアウトの存在もよく検討しておくのがよいでしょう。特に未上場会社は上場会社とは異なり、株主が身近であるケースもあるかもしれません。株主を増やすほうが会社経営にとって良い場合もありますが、どのように検討するのがベストなのかをよく確認し、対策を講じるべきだといえます。

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