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事業承継税制が格段に利用しやすく!中小企業経営者必見 平成30年度改正

(画像=Peerayut Chan/Shutterstock.com)

人口ボリュームの大きな層である団塊世代の人たちが後期高齢者となる、いわゆる2025年問題をご存じでしょうか。よく取りざたされるのは医療費増大や介護のことですが、経営者にとっては会社の後継者問題も忘れてはならない課題です。企業経営者の平均引退年齢は70歳と言われていますが、今後も引退する経営者が増えると予想されます。そんな世の中の動向を受け、2018年度に中小企業の事業承継税制が一部改正になりました。今回は、改正された事業承継税制について解説します。

事業承継税制が10年間拡充される理由

経営者の高齢化は日本全体の課題ともいえます。引退を検討する経営者の中には事業承継の準備ができていない経営者が半数以上いると言われています。今後さらに母数が増えていくであろう事業承継で、後継者が擁立できずに事業がストップする、廃業が増え、地方経済に打撃を与える・地方の経済成長率が大きく下がるおそれを鑑み、事業承継税制が改定されました。ただし、これは2018年1月1日から2027年12月31日までの10年間のみ適用される税制です。

なぜ適用期間が10年になるかといえば、その10年の間に多くの経営者が平均引退年齢に達するためです。ここで全国的に後継者への事業承継が加速すれば、本人たちや会社、従業員だけではなく、地方経済や日本経済にとっても大きなメリットとなります。

なお事業承継税制の正式名称は、「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除」及び「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除」といいます。

事業承継税制の変更点とは

(画像=rzoze19/Shutterstock.com)

2018年度の事業承継税制での変更点についてみてみましょう。これは経営者が保有する自社株式を後継者に贈与、もしくは相続によって渡す際に課せられる税金を一旦は猶予し、その後条件付きで一定期間保有することで自社株式に係る贈与税・相続税の課税が免除される場合があるというものです。

これまで納税猶予の対象となる株式数は全株式の2/3が上限とされていましたが、今回の改正によって全株式が対象となりました。また、相続の納税猶予割合は80%でしたが、100%に変更になりました。つまり、これまでは納税猶予が受けられる株式数は保有株数の53%程度でしたが、改正により100%の株式について納税猶予が受けられるようになったのです。

納税猶予対象者の拡大

今回の事業承継税制の改正によって、納税猶予対象者が拡大されました。これまでの事業承継税制では1人の先代経営者から1人の後継者への1対1での事業承継の場合に適用されていましたが、改正後は複数株主から後継者1人への承継、株主1人から最大3人までの承継を行う場合にも制度の対象となりました。

例えば、全株式の60%を保有する先代経営者の父親と30%を保有する母親のそれぞれからの承継も納税猶予の対象になります。あるいは全株式の100%を保有する先代経営者の父親から長男へ50%、次男へ50%承継するケースでも同様に対象となるのです。

雇用確保要件の緩和

これまでの事業承継税制では、事業承継が行われてから5年の間は平均8割の雇用維持が求められていました。しかし、中小企業では人材不足やワーク・ライフ・バランスといった働き方改革の推進に伴い、雇用の8割維持は難しい要件だったといえます。しかも、この要件が満たせない場合、その時点で猶予期限が確定し、多大な贈与税又は相続税の納税が必要でした。

今回の改正では、雇用要件は存続するものの、雇用水準が平均8割に満たない場合で会社の経営状況が思わしくない・悪化している場合などは猶予打ち切りは確定せず、認定経営革新等支援機関の助言指導を受け、経営を立て直すためにどうすべきなのかを考えることになります。

ただし、そのためには雇用水準が満たせなかった理由等の一覧を記載した一定の書類を都道府県に提出しなければなりません。また、認定経営革新等支援機関から受けた指導・助言内容を記載する必要があります。

事業廃止や自社株を譲渡した場合の納税額

これまでは、事業承継後に会社の廃業や株式譲渡した場合、納税猶予された贈与税や相続税の支払い義務がありました。ただし、今回の税制改正を受けて、企業の経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合には、税額を再計算できることになりました。主に、会社をM&Aした場合や解散した場合などが当てはまりますが、会社の状況が良くないにもかかわらず税負担で圧迫され経営資源に対する投資ができない、会社の運転資金がなく経営が成り立たないといった将来への懸念を軽減するためのものです。

例えば、贈与や相続の発生時の株式価値から算出された税額が仮に2,000万円だったとしても、過去3年間のうち赤字期間が2年ある場合などで、5年後以降に会社を解散したり、M&Aされる場合には解散時の相続税評価額か、下限はあるものの実際にM&Aをして売却した価格が適用されるのです。税負担が不安で思うように動けない企業にとっては、検討する価値がある改正だといえます。

後継者へスムーズな事業承継を

平成30年度事業承継税制の改正によって、さまざまな事項が見直され、後継者への事業承継を検討したい中小企業経営者にとっては利用しやすい制度になったといえるでしょう。予め後継者選びを行い、事業承継完了に向けた準備をしておけば、いざ事業承継を開始するときにもスムーズに物事が進むはずです。また、事業承継には資金も必要です。今回お伝えした制度を活用するのはもちろんのこと、金融機関等の専門家にも相談しながら、残される家族、会社、従業員にとってベストな方法を探ってみるのはいかがでしょうか。

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