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「企業買収への資金調達」と「銀行のクセ」3~具体例 事業承継/M&Aへの優先株ファイナンス~

(写真=PIXTA)

『「企業買収への資金調達」と「銀行のクセ」』シリーズの第3回です。第1回は、銀行が企業買収ファイナンスに消極的になる理由を、「銀行のクセ」を踏まえてお話しました。第2回では、M&Aによる企業買収ファイナンスとして、無議決権の優先株による資金調達が、不連続な事業リスクに対応しやすいことを説明しました。
今回は、具体的な事業承継、企業買収M&A事例を取り上げたいと思います。

外食産業の親族外事業承継/M&A

異業種の企業Aが、外食産業(都心型レストランと食品製造小売)=企業X(ターゲット)を買収したケースです。

項目 M&Aの内容と特徴
ターゲット企業X
業種
外食産業(都心型レストランと食品製造小売)
財務状況 年商   前期121百万円   今期120百万円
営業赤字 前期▲19百万円   今期▲21百万円
純資産  前期 59百万円   今期 47百万円
総資産  前期 106百万円   今期 94百万円
株主 代表取締役社長と配偶者で株式100%所有
沿革と経緯 〇宿泊業としての創業は江戸時代後期。
〇最初の都市型レストラン開店は、1953年。
〇製造する食品名が地域に浸透し、贈答/土産品としてのブランド力があった。
〇現社長は、先代から親族継承したが、別の事業の経営に傾注しており、本事業への関与は薄い。
〇M&Aの時点では、1店舗の営業にまで縮小。
株主/オーナーの売却希望条件 100%株式譲渡。M&Aによって、伝統ある事業を継続し、発展させる意思のある企業を探していた。
M&Aの買手から
銀行への
相談内容
〇異業種への参入に伴う事業リスクを踏まえた総合的な資金調達方法の相談。
〇買収資金及び新商品開発資金の調達を希望。

M&Aに至るまでの経緯 ~異業種参入と地域ブランドへの確信~

ターゲット企業Xは、外食産業(都心型レストランと食品製造)として70年以上の業暦。かつ、東海地方でシニア層に知名度がある企業。ただ、ここ数年は減収減益が続き、店舗の統廃合により1店舗営業にまで縮小していました。会社全体の損益計算書(P/L)では営業赤字。ただ、本社等経費を除いた外食事業だけの事業収支はプラスであることがわかっていました。さらに、貸借対照表(B/S)上、純資産が未だに5,000万円のプラスという状況です。

筆者(第三銀行ソリューション営業部 HS)は、買手の企業A社長から、「地元の老舗ブランドを維持、発展させたい」という熱い思いを伺うところから、この案件に関与し始めました。同社長の本業はあくまでコンサルティング会社の経営。M&Aを仲介・アドバイスすることはあっても、事業会社を経営することは当初想定されていませんでした。ところが、ターゲット企業Xのオーナーから相談を受けている間に、自らが事業継承することを思いつかれます。現シェフや従業員を維持し、仕入や採算管理等のオペレーションを改善すれば、老舗の地域ブランドを活かし、回復・発展させることが可能と確信。自ら企業買収することを決断されたのです。

「銀行のクセ」とM&A/企業買収への資金調達

「銀行のクセ」は、以下の(A)と(B)。
銀行のクセ
(A) 「会社全体」クセ
● 銀行は、資金使途の内容より前に、会社全体のP/L項目とB/S項目を見る傾向あり。
(B) 「過去と現在」クセ
● 銀行は、会社全体の「過去と現在」を見る。未来を織り込み難い傾向あり。
図-1をご覧下さい。「会社全体」かつ「過去と現在」の状況で融資判断をするクセを持つ銀行にとって、企業買収ファイナンスは銀行が苦手とするタイプの事案です。

図―1

本件も、買収側企業Aの「全体」と「過去と現在」の財務状況をいくら分析しても融資のリスク判断はできません。買収するターゲット企業Xの「個別」かつ「未来」を検討しなければならないのです。つまり、通常の運転・設備資金融資のような「連続性」の中での検討が困難であり、「不連続性へのファイナンス」と言えます。銀行員にとって挑戦性の高い案件です。

■企業買収ファイナンスの「不連続性」

融資判断のポイントとして、本件を整理してみると以下となります。

融資判断の4つのポイント
資金使途 : 買収対象=個別(ターゲットX)
返済力・損益計算書(P/L)項目:買手の企業A「全体」だけでなく、買収するターゲットの「個別」事業収支と複数事業体としての企業Aの将来事業収支が重要。
資産背景・貸借対照表(B/S)項目:同じく、買収するターゲットXの今後の個別B/Sと企業Aの将来B/S推移が重要。
銀行の総合採算:買収融資の個別採算と、買手企業全体の取引採算。

本件は、企業A自体がM&Aによりコンサル事業(BtoB)と外食事業(BtoC)を経営する複合事業体に変貌することが特徴です。異業種買収であることが通常の企業買収ファイナンスよりもさらに「不連続性ファイナンス」の色彩を強めることになります。

(「銀行のクセ」と「融資判断のポイント」については、企業オーナーonlineの「銀行のクセ」シリーズ、『「企業買収への資金調達」と「銀行のクセ」1』、及び、『「収益不動産ローン」と「銀行のクセ」1』)をご参照下さい。)

 優先株を活用した企業買収ファイナンス

このような「不連続性のファイナンス」に対しては、「調達元金の返済」も「期中の支払い(配当)」も業績連動であり、そもそも担保も保証も必要としない株式による資金調達が相応しく、さらには議決権なしで設計できる「優先株」を活用した買収ファイナンスが適していると考えられます。(図-2で、銀行融資と株式による調達を比較しています。)

図-2

M&Aへの資金調達方法の具体的検討

第三銀行ソリューション営業部は、企業Aの社長と綿密な打ち合わせを経て、以下のような複数の資金調達をお手伝いしました。

● 買収側企業Aの資金調達 株式購入資金 :第三銀行のローン
● ターゲット企業Xの資金調達 商品開発等資金 :優先株(さんぎん成長事業 応援ファンド)
● ターゲット企業Xの資金調達 運転資金等 :親会社(A)からの貸付
● ターゲット企業Xの既存借入 リファイナンス :第三銀行のローン

詳しい内容は、次回、第4回でご説明します。

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(作成:企業オーナーonline編集分室/第三銀行 HS)

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