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親族に経営権を譲渡し、引退しようと思う企業オーナーが考えたい事業承継

(写真=PIXTA)

事業承継のことを意識するとき、親族、特に子どもを跡取りとしたいと思う企業オーナーもいるのではないでしょうか。従業員への承継、M&Aによって社外に事業を引継するよりも、親族に継がせて存続をと思う気持ちもあることでしょう。一方で、親族に経営者としての素質があるのか、また誰をどのようにして育てるのかなど、検討すべきことはたくさんあります。そこで、親族への事業承継はどのような流れで行えばいいのか、その時に注意すべき点はどのようなことなのかを考えましょう。

親族への事業承継のプロセスにはどのようなものがあるのか

親族への承継は、後継者の選定、後継者の教育、社内外への周知の3つのプロセスを踏みます。それぞれのプロセスで注意すべきことを説明しましょう。

●後継者の選定
なんといっても、まずは後継者の選定を行うことです。親族のうち、誰を後継者に選ぶのかを決めます。経営者としての資質はもちろん大切ですが、親族内でも揉めないように配慮をしながら進めることが大切です。

●後継者教育

後継者が決まったら、経営者としての心構えや実務能力を身に付けることができるように教育する必要があります。後継者とコミュニケーションを取りながら、会社の経営理念や経営ノウハウを引き継いでいきます。すぐに経営を任せるのではなく、実務に関する知識と経験を積むことができるようにサポートすることも大切です。

例えば、社内教育の一環で、現場、営業、企画、経営などさまざまな部署で勤務できるようにローテーションさせると会社の全容が見えてくることでしょう。また、責任あるポストに就けることで判断力やリーダーシップを身に付けることができます。さらに、外部機関が開催する後継者向けのセミナー等に参加させることも良い方法です。

●社内外への周知

後継者教育と並行し、誰が後継者でどのような事業承継計画があるのかを社内外に周知することも必要です。事前に周知しておけば、社員は会社の将来性に対する不安をぬぐい去ることができますし、社員と後継者が信頼関係を築く時間を持つこともできます。

また、取引先や金融機関に後継者を紹介することにより、これまではぐくんできた人間関係も引き継ぐことができます。事業承継した後も継続的に取引を続けていく上で、利害関係者に後継者を紹介しておくのは大切なことです。

後継者に経営権を集中させるワケ

後継者の教育を終えたなら、実際に経営権を引き継ぐ段階に移ります。中小企業では、自社株式を後継者に譲渡して経営権を承継します。その時に、自社株の持ち分を一人に集中させることがあります。これは、自社株式が分散するのを避ける目的があります。

株式の3分の2以上を保有していれば、定款の変更、第三者割当増
資の決議といった重要な事柄を扱う特別決議を単独で可決することができます。そのため経営の安定性を確保するには、少なくとも3分の2以上、可能であれば100%の株式を後継者が保有することが望ましいと言われています。

とりわけ、親族の中から後継者を選ぶ場合には、経営権の集中を意識しておくことは非常に大切です。親の立場からすると、親族に資産を公平に残してあげたいと感じるものです。しかし、自社株式を親族一人ひとりに均等に分割してしまうと、会社に関する重要な事柄を後継者の一存で決定できなくなってしまい、会社経営に悪影響が生じます。

公平に資産を残したいと思う場合は、後継者ではない他の親族には不動産や現金などを譲渡し、自社株式は後継者にだけ譲渡するとよいでしょう。

家族への事業承継で活用できる節税対策とは?

後継者である親族へ自社株式を譲渡する方法は相続と贈与の2つがあります。相続税の非課税金額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)で算出することができます。贈与税と比較して非課税枠が大きいというメリットがありますが、自社株式の譲渡は経営者が亡くなってから実行されるため、経営者交代のタイミングが計りにくいというデメリットもあります。

一方、贈与税は年間110万円まで非課税となる暦年課税制度と、生前贈与した財産を相続時に改めて計算し税額を算出する相続時精算課税制度があります。相続時精算課税制度では2,500万円までが非課税となります。ただし、相続時精算課税制度を一度選択すると取り消しや暦年課課税への変更はできなくなります。そのため、どちらの方が大きな節税効果を期待できるか慎重に検討するのがよいでしょう。これ以外にも、自社株評価を下げることで、相続税評価額を抑えることも有効です。

さらに、親族への事業承継では事業承継税制も活用することができます。事業承継税制とは、中小企業の事業承継がスムーズにできるよう制定された税制で、この制度の適用を受ければ、相続税や贈与税の納税が猶予もしくは免除されます。

後継者選びは慎重に進めること

親族に経営権を譲渡して引退しようと思う場合、長期的な計画を持つことが必要です。後継者の教育には時間がかかりますし、自社株式の譲渡も計画的に行っていく必要があります。自社株式を譲渡するには税務上の知識も必要です。税理士や、金融機関など専門家に相談しながら早めに事業承継対策を行うようにしましょう。

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