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「企業買収への資金調達」と「銀行のクセ」1

(写真=PIXTA)

企業オーナーの皆さん、「事業リスクの高い案件」への資金調達で困ったことはないでしょうか?自己資金と銀行融資では必要資金が足りない、あるいは、そもそも銀行が融資に消極的であった、など。

銀行が、リスクの高い案件(たとえば企業買収や新商品開発)への融資に、通常の設備資金のように対応できないのは致し方ない面もあります。そういう場合のアイディアとして、「無議決権の優先株」によるファイナンスを提案してみたいと思います。

「M&Aによる企業買収への資金調達

第1回は、「銀行融資」と「優先株による資金調達」の違いを浮き彫りにするために、「銀行のクセ」から、検討を始めます。(あくまで銀行についての一般論として、また、考え方の一つとしてお話ししますので、お取引中の銀行には必ずしも当てはまらないことをご容赦下さい。)

「事業リスクの高い案件」とは、企業買収、新商品開発、海外進出など、現状の事業サイクルとは異なる資金使途の案件のことです。質的にも量的にもリスクが高く、経営トップの判断でしか決断できないタイプの案件です。

本稿では、「M&Aによる企業買収」を事例として話を進めていきます。

「銀行のクセ」と「融資判断のポイント」

「収益不動産ローンと銀行のクセ」シリーズでも取り上げましたが、「銀行のクセ」は(A)と(B)になります。

銀行のクセ
(A) 「会社全体」クセ
● 銀行は、資金使途の内容より前に、会社全体のP/L項目とB/S項目を見る傾向あり。
(B) 「過去と現在」クセ
● 銀行は、会社全体の「過去と現在」を見る。未来を織り込み難い傾向あり。

そして、資金使途が企業買収の場合、「融資判断の4つのポイント」は①~④となります。

融資判断の4つのポイント
「銀行のクセ」に合わず。
① 資金使途 : 企業買収=個別(企業全体から切り離された対象を検討・分析)

「銀行のクセ」に合う。
② 会社全体の返済力: 損益計算書(P/L)の項目
③ 会社全体の所有資産価値: 貸借対照表(B/S)の項目
④ 会社全体の銀行の総合採算:企業買収融資の採算を含む総合採算

「銀行のクセ」と企業買収

企業買収は、①資金使途が「個別」かつ「未来」の話が中心のため、「銀行のクセ」=「全体と過去&現在」とは相性が合わないものです。

また、通常の設備投資であれば、会社「全体」の一部として、「連続」の中で捉えることが可能ですが、企業買収は「全体」への影響が大きく、会社「全体」が「不連続」となります。これが、銀行員の不安をさらに増幅させるのです。

「企業買収」が「不連続」であるイメージ

それでは、企業Aがターゲット企業Xを買収するのをイメージ図にしてみます。下の図1-1をご覧下さい。

企業Aは買収前の事業Yと事業Zを経営しています。M&Aによって企業Xを買収し、事業Xとして経営します。イメージ図1-1では、事業Xの業績が悪化して、企業A全体が毀損してしまうところを表現しています。

図1-1

次に、図1-2をご覧下さい。簡略化した貸借対照表(B/S)の推移です。

図1-2

企業Aは、企業Xを全額借入金(銀行融資)でM&A買収します。企業X=買収後の事業Xの業績が悪化し、資本が毀損。結果的にM&A買収の借入金分だけ負債が増大したことを、誇張して表したものです。

企業買収のようなリスクの高い資金使途に、借入金(負債)でファイナンスすると一気に企業全体が不安定になる可能性が出てしまいます。

「不連続性」へのファイナンスとは?

通常の事業サイクルへの融資は、「モノ」を仕入・販売したり、あるいは、「モノ」へ投資することが資金使途です。「連続」性へのファイナンスです。ところが、M&Aは、企業という「生き物」の買収が資金使途で、「不連続」性へのファイナンスと言えます。

「モノ」は償却するものであって、購入金額である元本が増えることはありませんし、少なくとも方向性は予測可能です。「生き物」は体(元本)が急に成長したり、老化したり、病気になるものです。銀行員の頭というものは、「モノ」への融資を書類化することには慣れていても、「生き物」には慣れていません。金融商品の「生き物」=「元本が上下するもの」とは株式のことであり、この株式(エクイティ)リスクを考える習慣を持つ銀行員は一般的に限られているのです。

事業リスク内容と「銀行のクセ」

この『銀行のクセへの親和性』と『銀行のクセへの挑戦』の対比を図1-3にしてみました。

図1-3

「企業買収」のような「不連続性」へのファイナンスには、調達元本の返済が業績連動である「資金調達方法」が好ましく、「優先株」が検討に値するのです。

何が、銀行員の頭をよぎるのか?

このように、企業買収への融資の話になると、銀行員の頭をよぎるのは、「不連続」と「生き物」です。「連続」と「モノ」への融資に慣れている銀行員が、急によそよそしくなった経験はありませんか?

上場している大企業なら、新株による時価発行増資、エクイティファイナンスを行うところですが、中小企業の企業オーナーの皆さんは、どのようにファイナンスを組んだらいいのでしょうか?

次回は、「銀行のクセ」に挑戦する第三銀行の取組みと「優先株による資金調達」をお話したいと思います。

>>優先株による資金調達についてのご照会はこちら

(作成:企業オーナーonline編集分室/第三銀行 HS)

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