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民法の遺留分の特例を知り、事業承継をスムーズに進める方法とは

(写真=PIXTA)

事業承継をスムーズに行うためには、遺産相続に関する問題を解決しておく必要があります。特に、子どもが複数いる経営者の場合、死後に子どもたちが遺留分に関する争いをすることが多いため、注意が必要です。そこで、民法の「遺留分の特例」を使って事業承継をスムーズに進める方法を考えてみましょう。

相続の遺留分とはどのようなものなのか

遺留分とは、法律で定められた「法定相続人」に最低限残しておく遺産の割合額のことを指します。事業承継をスムーズに進めるためには、効果的な遺留分対策をしておくことが必要だと言われています。

例えば、自社の後継者に長女を指名したとします。長女に自社株を集中的に保有させてスムーズに経営ができるようにしようとあらかじめ遺言や生前贈与を行いました。この時、他の子どもが遺留分を保つために、「遺留分減殺請求」を行えば、長女は他の子どもに遺留分を返還する必要があります。

こうすると、議決権が長女に集中しなくなるため、会社経営を行う上で、支障が生まれる可能性もあります。確かに、自社株を子どもに分散して相続させることにすれば、株主の立場から会社を見ることができるため、クリアな経営が望めるかもしれません。しかし、自社株を子どもに分散させたがゆえ、子ども同士での争いが発生し、倒産、廃業に追い込まれる可能性もゼロではないのです。

このような事態が発生しないように、経営者は未然に遺留分対策をしておく必要があるのです。

親族への事業承継時に覚えておきたい遺留分に関する特例の2つのポイント

遺留分対策としては、遺留分に関する民法の特例を利用するのがよいでしょう。これを利用すると、以下の2つのことができるようになります。

1. 遺留分算定の基礎とする財産から、自社株式を除外できる
事業承継を行う上では、自社株を後継者に受け継ぐことが大切です。そこで、遺留分の特例では、自社株式を後継者に生前贈与すれば、その生前贈与分を遺留分から除外できることとしています。これにより、他の相続人による遺留分減殺請求を防ぎ、確実に自社株を後継者に引き継ぐことができます。

2. 遺留分の算定の際、生前贈与株式評価額を固定できる
今の遺留分制度の原則では、自社株式を生前贈与したタイミングが遺留分を計算する基準になります。仮に、生前贈与後に後継者が会社の業績を伸ばして、相続開始時までに株式価格が大きく上がった場合には、後継者は遺留分を請求する他の子どもに対し、多額の遺留分を返還しなければなりません。他の子どもたちは何の役割も果たしていないのに、頑張った後継者のみが大きな負担を負うことになりますから、頑張り損になります。

そこで、生前贈与時に株式等の評価額を固定し、相続時に遺留分の計算を省略できるようになりました。このことにより、贈与後の価値増加分は後継者のものとなり、後継者の経営意欲をそぐことがなくなります。

遺留分に関する民法の特例を利用する手順

実際に、遺留分に関する民法の特例を利用するには、どのような手順が必要なのでしょうか。

1. 後継者を決める
後継者は、生前贈与などによって自社株の過半数を持つ必要があります。

2. 後継者に生前贈与する財産を決定する
後継者に対して生前贈与する株式やその他の財産を決めます。

3. 他の子どもたちに、遺留分の特例の適用に合意してもらう
後継者に生前贈与をする財産を決定したら、遺留分請求権を有する他の子どもたち全員と話し合い、財産について遺留分の特例を適用することに合意してもらいます。合意は書面で行います。

4. 遺留分の特例の適用合意後、1ヵ月以内に申請する
他の子どもたちが遺留分の特例の適用に合意したら、合意日から1ヵ月以内に経済産業大臣に申請をします。申請書は、中小企業庁財務課、または全国に9ヵ所ある経済産業局あてに提出します。

5. 経済産業大臣の許可後、1ヵ月以内に家庭裁判所に申請する
経済産業大臣の許可を受けたら、後継者は1ヵ月以内に家庭裁判所に申請し、許可を得ることによって合意の効果が発生します。

事業承継をスムーズに進め、遺される家族が揉めないように配慮を

以上のように、遺留分に関する民法の特例を利用すると、他の遺留分請求者が後継者に自社株をはじめとした生前贈与について、遺留分を請求できなくなるので効果的な方法の一つだといえるでしょう。しかし、強引に物事を進めるのではなく、後継者や他の子どもたちとはよく話し合いを行い、遺される家族が揉めることのないように配慮を行う必要があります。

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