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法人保険で自社株評価を圧縮!経営者が贈与時に検討したいスキームとは

(写真=PIXTA)

事業承継を控える経営者にとって、自社株の評価は気になるところです。自社株の評価を下げるためには収益不動産などを保有する方法のほか、事業保険を活用する方法が考えられます。そこで今回は、相続税対策として事業保険を活用し、生前に自社株を贈与するスキームを紹介していきます。

どうして自社株の評価を抑える必要があるのか?

相続時には被相続人が保有するあらゆる資産・負債が相続の対象となります。会社オーナーの場合には、自社株の円滑な承継が相続税対策の面でも会社経営の面でも特に重要となってきます。

自社株が相続や贈与の対象となる場合、国税庁が定める財産評価基本通達に従って評価額を算定します。そのため、算定方法を頭に入れた上で対策を講じることが大切です。

通達では、主に「類似業種比準方式」、「純資産価額方式」、「配当還元方式」の3つの評価方法が示されています。特にオーナー会社の場合には「類似業種比準方式」や「純資産価額方式」を使うことが多くなります。

「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」のいずれにおいても、会社の純資産額を下げることが自社株評価を下げることにつながります。純資産額は会社の資産から負債を引いたものですが、会社の利益が累積されたものと表現することもできます。そのため、費用や損失が多くなれば、純資産額が低くなるという関係にあります。

事業保険を活用すれば保険料が損金として計上できるため、純資産を下げることにつながります。もちろん、事業保険でなくても、経費として計上できるものなら何でも純資産を下げることは可能です。ただし、無駄な出費であれば本末転倒といえるでしょう。事業保険は将来への積み立てや従業員の福利厚生として活用できる点がポイントとなります。

事業保険を自社株評価圧縮に、どのように活用するのか?

それでは、具体的に事業保険をどのように活用すればよいでしょうか。法人で活用できる生命保険にはいくつかの種類がありますが、以下では主要な例を4つ紹介したいと思います。

1つ目は長期平準定期保険です。定期保険はもともと「掛け捨て」の保険を意味しますので、万が一の場合の保障が主眼となるものです。役員などを被保険者、会社を受取人とすることで、万が一のことがあった場合でも会社の経営を安定化させるのに役立ちます。

ただし、実際には途中解約した際の解約返戻金が充実している商品が多く、会社が受け取る解約返戻金を役員退職金などの原資とすることができます。

長期平準定期保険では保険期間を通じて保険料が一定であり、保険のタイプに応じて保険料の全額あるいは1/2などの割合で損金算入することが可能となります。

2つ目は逓増定期保険です。基本的には上述の長期平準定期保険と似ていますが、保険金の額が保険期間の後半に5倍程度まで急増することが特徴です。

当初の保障額は抑えられている一方で、比較的早い時期に解約返戻金がピークを迎えます。そのため、ピーク時に解約して役員退職金などの原資として活用します。

保険のタイプに応じて保険料の1/2、1/3、1/4などの割合で損金算入することが可能となります。

3つ目は養老保険です。養老保険は、万が一の場合の保障に加えて、保険期間の満了時に満期保険金が支給される保険を指します。そのため、貯蓄性の高い保険といわれます。

従業員などを被保険者とし、死亡保険金の受取人を従業員の遺族、満期保険金の受取人を会社とする契約が一般的です。一定の要件を満たすものは保険料の1/2を損金に算入することが可能となります。

4つ目は医療保険です。医療保険は、罹患した場合の入院、手術、死亡時に給付金が支払われる保険です。福利厚生の目的で、被保険者を従業員、給付金の受取人も従業員とするのが一般的です。5年、10年で払込し、全額損金参入できるものがあります。

上記で紹介したような事業保険を活用することにより、会社の損金計上額が増え、純資産額を下げることができます。また、損金計上により利益が下がることで、計算要素に利益を含む類似業種比準方式でも評価額を下げる効果が期待できます。

自社株の贈与とは

相続税対策を考えると、評価額が下がったところで自社株を生前贈与しておくことが有用です。贈与税の暦年課税では年110万円の非課税枠があります。毎年110万円相当の自社株を贈与すれば、10年間で1,100万円の自社株を非課税で後継者に譲渡することができます。

また、贈与税の暦年課税に代えて相続時精算課税を選択することで、贈与時に2,500万円の特別控除と20%の一定税率を利用しながら、相続時にあらためて相続税として精算することができます。先に贈与をすることで、その後の経営努力により自社株の評価が高くなっても相続税額に影響しません。

その他に、一定の要件を満たす場合に中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)による贈与税の納税猶予制度などを活用する方法もあります。

自社株評価を抑える時に気をつける点は?

事業保険を活用して自社株の評価を下げる場合、贈与のタイミングには注意が必要です。

財産評価基本通達に従って評価額を算定する際には、基本的に直近の決算書数値を用います。したがって、事業保険の保険料を損金として計上した事業年度の次の事業年度に贈与を行わないと、損金計上の影響が利益額や純資産額に反映されません。決算日近くに贈与を行う場合は、株主総会や取締役会の決議、贈与契約の日付などに十分注意しましょう。

また、暦年贈与などを行う場合、相続開始前3年以内に贈与された財産は相続財産に含めなければならない点にも留意したいところです。つまり、一旦、贈与に関する課税関係をクリアしていても、再度、相続税として計算し直す必要が生じます。

いずれにしても、事業承継は早めに対策を講じるほど選択の幅が広がります。事業保険にもさまざまなタイプがありますので、自社株対策に活用する予定がある場合は、金融機関の窓口などに相談してみるのがよいでしょう

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