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失敗しない後継者育成 カギは「サクセッションプラン」

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(写真=PIXTA)

後継者育成は事業承継において重要な課題の一つです。後継者をうまく育成できなければ、会社の取引先や従業員にも迷惑をかけてしまいます。そのため、事業承継ではサクセッションプランを策定し、後継者を計画的に育成することが重要です。以下ではサクセッションプランの策定方法と、それを実現するためのポイントについて解説したいと思います。

後継者育成の重要性

帝国データバンクが2017年11月に公表した「2017年後継者問題に関する企業の実態調査」によると、国内企業の66.5%が後継者不在と回答しており、この数値は2016年2月の前回調査から0.4ポイント高くなっています。

実に3分の2に相当する企業で後継者が不在となっているのが現状です。もちろん、経営者が若い企業であれば現在後継者が不在でも問題ありませんが、経営者が60代以上の企業に限定しても半数を超える企業で後継者が不在となっており、事態は深刻といえるでしょう。

サクセッションプランとは?

後継者育成には5~10年の歳月を要すると言われます。そのため、自社で育成した後継者に事業承継を行う場合には計画的なアクションが必要になります。後継者育成のための羅針盤となるのが、今回のテーマであるサクセッションプランです。

「サクセッション」とは引継ぎのことを意味します。つまり、サクセッションプランは事業承継計画のことです。もともと、サクセッションプランは後継者の育成計画のことを指していましたが、現在ではどのようなビジネス環境になったとしても、成長を加速させたり、リスク回避ができる幹部を含めた人材を育成しておくことをいいます。

自分の親族を後継者にしたいと考えていたとしても、本当にうまくいくかどうかは誰にもわかりません。そのため、将来の後継者候補や経営陣・管理職候補を複数人育成し、ポストが空いた時に後任として経営を任せることができるように準備をしておくというものです。

サクセッションプランで将来の後継者・会社経営を担う管理職をプール

後継者への事業の引き継ぎの際に考えたいのは、代表者の後継者だけではなく経営陣や管理職全体の後継者です。いくら代表者の後継者が優秀だったとしても、経営は1人では成り立ちません。代替わりが行われても永続できる企業経営が必要です。

サクセッションプランを作成するときに大切なのは、人材要件をきちんと定義することです。将来どのような人材を経営陣として会社を運営していくのがよいか、誰にどのような管理職を任せることが会社存続のためになるのかをよく考えなければなりません。自社の経営理念や企業風土を理解し、経営戦略にも精通していることが大前提です。

それに加えて、知識やスキルといった資質だけではなく、コミュニケーション能力、リーダーシップなどの能力面も検討しましょう。まずはこのような自社にとって必要な要件定義を行い、人材選抜を行い、育成していく必要があるのです。

サクセッションプランの作成時には、実際に事業計画数値や経営者の年齢などを鑑み、各年度における後継者の年齢、想定される役職、後継者に対する社内および社外教育、予定持株数などを記載しておきましょう。たとえば1、2年以内に後継者が必要な部署もあれば、5、6年後に必要な部署、あるいはすぐに後継者が必要な場合もあります。後継者へ引き継ぎをする時間軸が異なるため、いつどれだけ後継者が必要なのかを事前に確認することが重要なのです。

サクセッションプランに含むべき3つの事項

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(写真=PIXTA)

上記のように人材定義を行い、将来の経営陣・管理職候補を選出したら、実際に育成をしていきます。ここでは、サクセッションプランを立案するうえで必要になる3つの事項について確認します。

●社内教育
経営者には社内のあらゆる業務に関する知見が不可欠です。そのため「営業だけしか知らない」というような偏りが生じないよう、生産現場、総務、財務など幅広い部署を計画的に経験させるようにします。そのため、社員教育ではローテーション制度を活用するのがよいでしょう。

また、社内でのローテーションを進めると同時に、経営者とのコミュニケーションを密にして経営理念などを共有するほか、経営ノウハウを吸収させることも必要です。また、実際に役員や上級管理職として、経営者に近い視点で業務を執行させることも重要です。

●社外教育
社内で人事ローテーションをしながら実務を経験させるのも大事ですが、商工会議所や商工会が主催する経営革新塾などの外部セミナーを積極的に活用し、経営について学ぶ機会を与えることも大切です。中小企業大学校が開催している経営後継者研修は、10ヵ月におよぶ全日制カリキュラムで、経営戦略やマーケティングなどの座学に加え、自社に即したアクションプランを策定するという実践的な内容も含まれています。本腰を入れて後継者育成するためには、最適なカリキュラムといえるでしょう。

そこには経営者のみならず、未来の経営者となる後継者候補も多くいるでしょう。交流を深め、横のパイプを太くしておくよい機会となると思われます。

●自社株の移転計画
サクセッションプランの中には、自社株をどのように後継者に移転させるかを盛り込んでおくことも大切です。時間をかけて生前贈与する場合でも、事業承継税制を活用する場合でも、税法上の要件を慎重に検討して税負担の軽減に努めることが大切です。

サクセッションプランにはPDCAが重要

以上のようなサクセッションプランを策定するために、専門家の力を借りるのも一つです。特に計画の遂行状況を定期的にモニタリングするPDCA(Plan、Do、Check 、Actionのサイクル)を回すためには、金融機関や経営革新等支援機関などの専門家が良きパートナーとなる場合もあります。

終身雇用や年功序列ではない評価制度を導入する会社が増え、これまでのような横並び意識は薄れています。また従業員の立場からしても、ずっと同じ会社で固定して働くのではなく、キャリアアップのチャンスがあれば別の会社に転職をすることも検討する人も増えています。親族・従業員にかかわらず、優秀な人は自社だけではなく他社からも引く手あまたであるため、早くから経営者候補として育成するほうが将来的な離脱防止となる可能性もあるのです。

労働力人口が徐々に減っていく中、今後はいかにして将来の経営陣候補となるべき人材を育てていくかが重要になります。後継者候補には若いうちからさまざまな経験を積ませ、振り返りを実施しながらより良い後継者となるように育成を行いましょう。

サクセッションプランを作成し、後継者育成の進捗状況の確認を

日本政策金融公庫総合研究所が公表している「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」によると、中小企業の廃業理由の3割近くが「後継者難」によるものです。また、「最初から自分の代でやめようと思っていた」という回答でも、後継者がいれば事業を継続するケースが含まれている可能性があります。

後継者を育成して事業を存続することが、取引先にとっても従業員にとっても望ましいことは言うまでもありません。これを機に、あらためて自社の後継者育成について進捗状況を確認してはいかがでしょうか。

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